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こちらは、主に素直でクールな女性の小説を置いております。おもいっきし過疎ってます
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素直春日お嬢様七話

「いやーカイザー。あたりまえのラブソングでしたねー」
「まあな……。感慨に耽っているけど、どう考えても駅前付近に墜落したよな」
「そうですね。あの方向と角度だと、素直電鉄モノレール、素直市駅に落ちたんじゃないでしょうかねぇ」
「うー。大惨事だな」
「……そうですね。カイザー」
 郊外の最果て、砂浜に向かって金田バイクを漕いでいく。
 振り向くと、もくもくと真白の煙が立ち上る。離れた中心部の方角に、小さくみえる瓦礫と化した素直ヘリコプターが燻っていた。
 運転はヨシオ君に任せて、俺は風に身を預けた。
 操作はヨシオ君のオートマティック。動力は電動に切り替えた。きっかけをペダルに与えて、後は電力と惰性が金田バイクを漕ぎ進める。
「ホントお嬢様、可愛らしかったですね」
「そうそう、アレいくつのとき? ヨシオ君、九年の沈黙がどうのっていってたじゃん」
「九年前ですよ。お嬢様が八歳のときですね」
「じぇんじぇんいまと、変わらないんですけど……」
「夢の中のお嬢様、ネバーランドの住人ですからねぇ。それが素敵なんですけど」
「ふーん……。これからも春日はかわらないんだろうか、なぁ」
「それはカイザーの、気持ち一つでしょう。お嬢様は初めて人間という有機物に心を奪われましたから、染まるも熟れるもピュアであるのも、すべてはカイザーの手の中」
「そうか……。まー春日は、変わらず居て欲しいのな」
 高校生になってあんなにピュアでいられる人間は、そうそういないから。春日には素直に居て欲しい。
 春日には、素直財閥には、それだけの――財力、名声、影響力、そのもの力《パワー》――を確立している。
 こんごも、春日が無茶をして弾圧されようとも、それら複合された力が全てを弾き返すだろう。
 春日は無敵だ。周りの実力だけではない、春日当人に実力が備わっている。あとは、いかに春日を導くのか、が俺の役目じゃないだろうか……。
 気負いすぎかもしれない。なにを偉そうに、と俺も思う。
 が、一方的な願望でも、素直グループから頼みもされてなかろうが、俺は数々の意味合いで春日を護っていくべきだ。
 上空に佇んでいた春日と黒服がくるりと体を返した。背負われたジェットから青白い火が噴く。
 硝子に陽光が遮断され、鈍く太陽が輝いてみえる。下降気味に暮れゆく太陽。徐々に、真っ青な空が黄金にのびつつあった。
「そうだヨシオ君。さっき返事がなかっただろ? 教えてよ」
「スパコンハッキングのときですか?」
「うん、そう」
「あのとき、ですね……」

 ☆

 ヨシオ君は、心中を、こう語った。
 ――いやーね。こちらとスパコンの、双方向の回線をいきなり送受信してたら一発でやられてました。いくらパスワードを使って進入しても、すぐにウィルスと感知されて消去されてしまします。
 だっていくら安全に通信したところで、スパコンと春日様の意に背く命令をしようとしているんですから。
 だからですね。はじめは送信のみでランダム兵器を停止するために回線を開きます。その際に、ルーレットを操作する容量が足りないので、兵器を確定させます。
 なんでも良かったんですが、今回は「神の玩具♪ 春日☆悪戯」に決まりました。
 その間、兵器発動までのタイムラグ中に停止命令をします。今回は各国主要都市の選択です。
 もちろん瞬間的にウィルスを感知してスパコンが破壊しにきますが、こちらはその破壊行動を予想して回避するように、事前にプログラムを組んでおきました。
 わかりきっていますが……予想が一つでも間違っていたらアウトです。ですから何万何十万桁のケースを用意しました。破壊行動の数をこちらが用意したケースを上回っていれば勝利です。
 で、事前に準備していたプログラムを行使している最中に別の兵器を替わりに発動させなければなりません。なににせよ、兵器を発動させなければ、このランダム各種兵器プログラムが終了することはありませんから。
 その停止命令中にオンラインに切り替えて、兵器を変更させます。
 普通に変更しようものなら、スパコンになにをされるかわかりません。そのための事前プログラムです。
 時間もありませんでしたから。ぐずぐずしていると時間切れで、各国どこかしらに神の雷《テゥールハンマー》が発射されてしましいます。
 スパコンからのジャミングは完全に事前プログラムに任せて、兵器変更に専念しました。
 当然……停止命令と兵器変更を同時に行なえるほど、性能が高いわけじゃありません。しかも相手は、素直シティの地下に鎮座する超弩級のスーパーコンピューター。
 残り0,87秒ですね。兵器の変更と回線を切断できたのは。
 回線を切る直前、別窓に常駐させていたプログラムを確認すると、ほぼスパコンに相殺されていましたよ。残っている実行データはざっと見で、百ちょい。一秒しかもたなかった。すんでで成功しました。
 だからカイザーに返事ができなかったんですよ。
 えぇ? なんで「愛をおぼえていますか」ですって?
 可愛いじゃないですか、春日お嬢様。カイザーに一度見てほしかったんですよ、幼少の春日お嬢様を。まぁ、いまとあんまり変わらないですが。いいじゃないですかぁ、カイザーにはお嬢様の全てを知ってほしいですね。
 素直春日お嬢様と対等に或ることができうる人間は、カイザー以外に考えられません。
 とまぁ、そういいましたが、もう一つ。
 「愛をおぼえていますか」の他に損害程度の低い兵器は無かったんですよね、正直。
 いや、ダメージが凄すぎる。尋常じゃありませんよ。基本的に開発される兵器は国家が滅ぶクラスの物しかありませんでしたから。
 ここで知っていて欲しいんですが――春日お嬢様直属から末端までのAI思考ルーチンは、完全にお嬢様寄りです。
 すなわち、お嬢様が喜ぶようにAIは学習しております。
 ですから……。
 通常、春日お嬢様付けのAIは、嬉々としてランダム兵器を実行するでしょう。彼らを想像するに、多分、素直式地殻操作システムを選ぶはずです。
 だって、無駄に大げさでまわりくどくて、面白いじゃないですか。一応、うちだって春日お嬢様製作のAIですから、面白いと思いますもん。
 では、何故、そうしなかったのか?
 不肖ヨシオは、お父様直属のマシーンなんです。お父様にプレゼントされたマシーンになりますので、完全に独立しています。
 そりゃ春日様の製作ですので、横の繋がりはありますよ。AI同士で情報交換もしますし、必要とあればお父様以外の人物も乗せます。現にカイザーを乗せているでしょう。
 だから、ランダム兵器を回避できたんです。
 はっきり言って、うちがお嬢様直属のAIだったら100%負けてましたね。同じ直属同士だと、数億倍の性能を持つスパコンに思考が読まれますから、太刀打ちできませんよ。
 まず負けます。まずもって敗北。勝てる要素を見出せません。
 それでもアタックできたのは、うちがお父様直属のAIだからです。
 元々お嬢様の情報を持っています。そのうえお父様の直属で、スパコンからはうちの思考ルーチンを読みにくいはず。だから勝てる見込みが出てきたんですよ。
 それでも半々だったのは、さすが超弩級スーパーコンピューター、と言えますね。
 えへへ、ちょっと偉そうでしたか……。
 ほらカイザー。春日お嬢様が砂浜でお待ちしていますよ。いそいで向かいましょうよ!

 ☆

 金田バイクは坂道に差し掛かった。登りの坂道。視界は登りの道路に遮断されていた。越えれば前方にひろがる海がある。
 春日が居る、黒服が居る。すこしむっつりした、表情の薄い春日の笑顔がある。
 あいたくなった。無性にあいたくなる。
 ただ単に、幼少の頃の春日に心を奪われたわけではない。無機質なAIにしか心を通わせる春日をいじらしくおもった、だけではじゃない。
 素直。そして、なり、はクール。その145cmに満たない小さな身体に秘めた、燃えるような熱量――情熱。
 春日の生い立ちからなる純粋な原石を、育まなければならないのではないだろうか。いんや……。
 俺がそうしたい。
 実はカイザーとか、からかわれているような呼び方をされても、嫌な気持ちじゃなかったんだよな、別に。
 だから俺は、春日をこのまま素直財閥の春日お嬢様として、甘えて成長していって欲しいとおもうんだ。社会的に適応してなくてもいいじゃんか。
 一般人が本質を知らずに流行を鵜呑みにして間違った知識を常識としていく中、春日は独自の道《みらい》を歩んでいけばいい。特異な環境で育った春日は、ピュアで恥ずかしく生きていってほしいんだ。
 その風上に俺が立って、全てを受け止めるぐらいに。
「そろそろ砂浜でっせ」
 ヨシオ君のヴォイス。とりあえずの終焉を迎えるのか。
 日中の出来事――嘘のような爆破行為。俺も加担した爆破。
 一瞬だった……。
 前方より、登り坂の終着点が迫ってくる。潮風が漂って、俺の鼻先を掠めた。
 もうすぐだ。春日と黒服、あいたい。頂上からみる春日と黒服の姿は小さいだろう。
 急《せ》る気持ちが脚を速め、一気に上り坂を登った。
「いくぜ!」
 駆け上がった。陽光が視界を貫く、一面がホワイトカラーに包まれた。そしてぼやけ、千切れるように光がのびゆく。砂浜が一面を覆い尽くした。
「春日ぃ!」
「春日お嬢様ぁ!」
 俺とヨシオ君は春日の姿も確認しないまま、大声で雄叫びをあげた。
 春日と黒服の姿がみえた。手を振っている。俺たちを迎え入れるように、二人はやさしいほほえみだった。姿が小さい二人だけど、なんとなくそうほほえんでいるように感じたんだ。
 下り坂を、埃や土煙を撒き散らしながら、めいっぱい金田バイクをこぎ進め、二人の元に向かった。

  1. 2008/05/26(月) 23:38:25|
  2. 短編作品|
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