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こちらは、主に素直でクールな女性の小説を置いております。おもいっきし過疎ってます
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充足(一般エンタ)

 視界がぼやけている。足元がねっとりとしている。僕は直立しているのだ。
 よくわからない、が第一声だった。
 足の裏が粘っているので下を向くと、残念なことに視界がぼやけているために、色気が褐色にひろがっていた。
 体液なのか、自然的な液体なのか、はたまた人工的な液体なのかは判らないが、とりあえず粘っている液体が足元を覆っているのが解ったぐらいか。
 目を細めて辺りを覗《うかが》ってみる。まるでモノクロームフィルムのような安っぽいフィルターを掛けた映像だった。キャメラが寄る、そして引く。視界の色気が正常に戻りつつある。アイボリーの映像に、不意に人気《ひとけ》が飛び込んできた。
 僕の足元に人の股がある。いまだアイボリーに滲んでいて、足元に転がる人は赤系のスカートを穿いるとだけわかった。ペイズリー柄は確認できたが、その柄の着色が緋色なのか青紫なのかは把握できない。
 丁度、僕の左足が股の中心部に食い込んでいる。したがって、この女性と思《おぼ》しき人物の左足が僕の両足の合間にあるわけだ。
 意識が徐々に回復する。足元のねばねばが気になり片足を上げると、体勢がぐらぐらと揺れた。そして倒れた。そのとき、はじめて、落ちるという感覚が走った。
 床に腰を打ち付けて、僕はベッドの上で直立していたことに、気がついた。
 側頭部に激痛を覚えた。鼻にツンとくる、この感じ。衝撃の度合いが、ある一定を超えたのだ。掌を側頭部に差し込むと、ねろっとしている。生暖かい。掌を眼前へもっていくと、酸化していない真っ赤な鮮血に塗れていた。
 この時点で僕は、やっと意識が完全に回復して色素も正常に戻っていることがわかった。これで事態が把握できるという、頭部からの出血による不安よりも、安堵が全身を支配していた。
 起き上がり様に振り向くと、ガラステーブルが破損している。丸みを帯びた角だったが、一点だけ鋭く欠損している。その箇所から、稲妻のようなひび割れが中央に向かって突き進んでいた。
 そりゃぁ頭から血もでるわなぁ。僕は自然に伸びをした、生あくびも。生理現象に身を任せた。
 この状況で感覚がおかしくなったのだろう。全く記憶を辿れない。現在自分の出血よりも、この状況の把握の方が重要なのだから。
 ベッドに腰を掛けた。ポロシャツの胸ポケットから煙草を取り出そうとすると、直に指先が肌を触っていた。頭をぽりぽりと掻いて、緊張感のない声色をあげる。身体を眺めると、ポロシャツどころか全裸だった。
「おいおい全裸ですか……」
 ベッド脇に窓があるらしくカーテンで遮られ、隙間から薄っすらとした陽光が注ぎ込まれていた。
 皮肉にも全裸のお陰で肌寒さがはっきりとわかり、早朝なのだとおぼろげに理解した。
 昨晩はいったい……何をしていたんだろう、と首を捻る。コキュコキュと関節が鳴った。その場に緩和した空気が流れた。
 喉をごろごろと震わせると痰が絡んだ。喉の渇きが絶頂だったが、ニコチンの摂取の欲求と体からの要求が絶頂に達していた。僕はテーブル辺りを見渡して、ポロシャツを探す。小奇麗に畳まれた衣服が、ベッドの傍にあった。
 ジーンズの上にポロシャツ、その上にトランクスとソックス。記憶の断片を追ったとしても自分で折り畳んだとは思えなかった。自分の性格上、無いと考える方がより自然である。
 そして、この女性が折り畳んだものと考えるのが、ベターだ。
 胸ポケットに、煙草特有の角張った膨らみが無い。仕方なく着替えるだけ着替えてしまって、煙草を探すことにした。テーブルから少し離れた場所に煙草が転がっていた。先ほど頭をぶつけた拍子に飛んでしまったのだろう、ワンルームの一室の片隅に煙草と百円ライターがあった。
 その煙草の真横に一枚のメモ帳。
 僕の、特徴ある丸字で書かれてある。
 ――お前は転がっている彼女を殺す。できればこれを見た瞬間、この部屋から逃げ出せ。
 確かに自身の文字だった。目を疑ったが、そこに紛れは、無い。
「それじゃあ」
 振り返った。ベッドを凝視する。女性だ。それはわかっている、スカートを穿いているから女性と判断したが。僕の知り合いにオカマや性同一障害者は居ない。半笑いでニヤけた面のまま横たわっている人物は見間違いようもない。
 彼女だ。
 彼女を一瞥して呻いた。幾度もなく嗚咽がこみ上げる。絡まっていた痰が口内の奥にひろがり、ぷつぷつ気泡が弾ける。我慢できず痰を吐き出す。絨毯の毛先が粘状の体液を吸い込み、こんもりと盛り上がった。
 思わず足の裏を触る。粘着した液体が乾燥して固形物になっていた。引っ掻くように足の裏をほじると、ぼたっと厚みのある物体が剥がれ落ちた。凝固した血液だった。鈍く表面が波打っている、酸化したどす黒い血液。
 彼女の股から大量の血液がベッドに沈殿していたのだ。異様に黒々としているが、結晶板が黄色く覆い、表面は半透明に艶やかだった。ところどころ血液が集まり乾燥しきれず、斑模様になっていた。
 しかし、僕は意識を失う前に、お前は彼女を殺す、と記入していた。まだ彼女は死んでいないのだろうか?
 いったいどのタイミングでこのメモを残したのかはわからないが、意識を戻した僕に対して警告を発しているのだろう。
 彼女は両脚を伸ばし、しっかりと股を開いていた。ペイズリィ柄のロングスカートはこげ茶に染まって、半分以上捲れあがっている。ショーツは片方の太腿の中間に引っ掛かり、血液を吸えるだけ吸い込んでいる。ティシャツも乳房の上まで捲られている、鎖骨の下あたりまでだ。ブラはフォックが外れ、だらしなく腹の辺りまでずり下がっている。半笑いのニヤついた表情が、堪らない。
 頭が割れるように痛い。耳の裏が生暖かい。ぬるぬると滑るように血液が垂れ流れている。側頭部からの血が、いまだ止まっていない。
 流れ出る鮮血が貧血を誘っている。また目の前が霞みかかってきた。脳に血液があまりいっていないのか、脳に辿り着いた血液がそのまま側頭部から流れ出ているのか。冷静さを欠いているのは確かだ。
 ……冷静さを欠いているのに確かだ、と断定する自分に嘲笑が漏れる。
 とにかく、過度にドーパミンを噴出させてアドレナリンが分泌している。軽い躁《そう》状態だ。安定しない思考が物語っている。
 この半笑いの面で死んでいるのかいないのか、彼女は寝息の一つもたてていない。
 全身に苛立ちが這った。
 僕はどうしたいんだ。何を求めているんだ。過去の自分は、現在の僕に何を伝えたかった?
 手を伸ばして、転がっていた煙草を拾う。限界まで主流煙を肺に溜め込んだ。くらりと頭が揺れる。既に煙草による酸欠なのか出血による酸欠なのか、判断さえ喪失していた。
 彼女の腰の付近に座り、火種を発火させた。ぐんっと煙が胎に染入る。
 情報が不足しすぎている。
 一通のメモ、血塗れの彼女、現在は早朝、これだけで何を推理しようというのだ。
 ついでに側頭部からの出血と……。――これはどうでもいい。
 不意に背中に丸みを帯びた非常に柔《やわ》い感触があった。首筋に人肌の感触。
「うーん……おはよぉ。すっごい良かったよ……。あんな趣味があるとは思わなかったな」
「あん?」
 顔を捩ると、彼女の面がそこにあった。混乱が生じる。
「だからぁ、今日は生理だから駄目だって言ったのにぃ、無茶するんだから。あーあ汚しちゃったなぁ」
 沸々と怒りが込み上げてきた。
 ただのマニアックなプレイじゃねーか! てめぇなに興奮してんだよ。
 油分が浮いている。固形物が混じっている。
 やられた。勘違いだった。生理ですよ、生理。
 しかし、これで話しが終わることはなかった……。
「ごめん、先シャワー浴びてくるね。もうね、ぐっちゃぐちゃじゃない」
 と、彼女は欠伸を軽く抑えながら、けだるくベットから立ち上がった。
「ああ、そうですか」 
 僕はようやくメモ帳の文字の意味を理解した。そういうことだったのだ。昨晩の記憶も取り戻した。
 下半身が硬直をはじめる。身体では、直立の準備がはじまろうとしている。そして、僕は行動に移すだろう、抗えない快楽によって。このメモの文面、お前は転がっている彼女を殺す。
 ベッドから立ち上がった彼女は、捲れたスカートを直そうとしたが乾燥した血液が固まって上手く出来ない。ぱりぱりと音をなして砕け落ちるだけだった。
 僕はガラステーブルの両脚を握り締めた。
「おーい、そこの彼女お茶しない?」
「んん?」
 彼女の振り向き様。
 僕はテーブルを投げつけた。
 結構な重量のため、投げつけたテーブルの放物線はだらしない反比例のような弧を描いた。そして脇腹にめり込んだ。彼女は半目を開いて、苦渋の面持ちを浮かべる。
 駆け出して彼女の前髪を掴む、その勢いのままテーブルに額を打ち付けた。跳ね返すような感触があった。元々テーブルにはひびが入っていたが、それを深く刻んだだけだった。ぱっくりと彼女の額が割れる。――無言。前髪から後頭部へ髪を持ち替えてもう一度、額を叩き込んだ。
 完全に貫通した感触だった。ガラス面を貫通して、自分の手首にガラスが突き刺さっているのだ。引き抜き様、めりめりと皮膚が剥がれる。血が吹き出る。
 彼女の体は、くの字に折れ曲がっていた。
 その途端、僕は満たされた。充足したのだ。
 ちりちりと電流が脊髄を駆け抜け、脳天から昇華する感覚。一気に痺れた。硬直は絶頂を迎える。勃起して波打っている。意識が遠のき、また直立がはじまる。既に、何度目かの硬直を迎えているだろうことは理解したが、もう、この時点で、この硬直……充足から逃れることは不可能なのかもしれない。
 時間が限られた。意識を失う前に、また目覚める自身に対してメモを託さなくては。
 いや、どっちだ?
 求めている、否定している、この充足を……。
 ゴミ箱に彼女を殺す、と書かれたメモを捨てた。記憶が戻っているのでメモとボールペンの場所は知っている。
 一応、ゴミ箱を漁って、もう一枚捨ててあろうメモを確認する。
 あった。前回のメモ。
 ――お前は彼女を無茶苦茶に犯すだろう。できれば、目覚めたら素直に寝ることをお勧めする。
 エスカレートする欲求が自己を貶めた。いや、突き進めた。そう、充足が僕を歓迎した。
 このメモをみて、味わった充足を思い出した。
 その時の僕は、生理中の彼女を犯すだけだった。一気に充足した。そこで止めれば良かったんだが、味わってしまった充足は更にエスカレートする結果をもたらした。
 本来ならば、今回は至らなかったかもしれない。殺すところまでいくこともなかったかもしれない。しかし、この側頭部からいまだだらだらと溢れる鮮血がその冷静さを失わせ、現在に至ったのではないか。脳が視覚聴覚嗅覚触覚、快楽を渇望している。
 しかも。その失敗を上回るほどの充足感。もう次回の結果は同じだ。また快楽を得るだろう。もう止められない、止めることの無意味さが硬直を是正する。
 
 
 僕は書く、メモ帳に最期の充足を求めて。
 ――お前は死姦するだろう。もう止めても無駄だよねー。
 僕は直立した。意識が消し飛んだ。
  1. 2010/01/09(土) 21:42:45|
  2. 短編作品|
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