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こちらは、主に素直でクールな女性の小説を置いております。おもいっきし過疎ってます
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裏取引

「この公式は――」
 黒板の前で先生は、額に噴き出す汗をハンカチで押さえていた。パタパタとハンカチの音が教室に響く。
 カチカチとシャープペンシルのノック音。吸う息、吐く息がひたすら教室を包み込む。夏も終わりに近づいて、枯れそうな蝉の声がミンミ――ジジジジジと、弱々しく発していた。
 霧ざめた長く歪む雲を窓から眺めた。ノートも写さずに……ただ訪れる秋の空を覗いて、たそがれていた。
「素直、ここちょっと解いてみて」
 先生の言葉に反応する私は、けだるく立ち上がり、その公式だけを見て正解を先生に告げる。ぱっと黒板を一目認識しただけで、答えなどは理解できた。そうして私は、また窓の外へ視線を流した。
 退屈な授業。出される問題も、その答えも。内容すべて解っていた。この毎日がいつまでも続く。私は飽き飽きとした日常に追われていた。
 中学の頃はそうでもなかったが、教育としてのシステムを把握した時点で、私はすでに高校を卒業していた。入学当初、高校三年間のカリキュラムを自室で取り組み、半年かけて自主的に卒業していた。現在自室で大学入試の対策をしていた。あと二年半も浪人できる。実際には浪人ではないが、大学入試の準備期間は、星の数ほどあった。ただ、日本の教育制度の中では、待つ事しか出来なかった。
 シャープペンシルが鳴り響き、しゃっしゃっと紙にペンを滑らせる空間の中に、気になる音がした。
 最後部の席に座る私は、教室を見渡せる事が出来た。たそがれを十分堪能した私は、気になる音の主を探す。机の下に隠すように携帯電話を持ってきて、メールを打つ女性。同じく週刊誌を読む男性。横の席に座る男性は、私を凝視しながら――はあはあ――と甘い息を漏らし、口をすぼめ、眉をしかめていた。私はこの摩擦する音が気になるモノかと、耳をそちらへ傾けた。しかし、そうではなかった。
「なんだ、違うのか」と残念に思い、私は首を横に振る。黒髪がバサバサと広がった。そう高くもないコンディショナーの香りが辺りに拡がり、横の男性の嗅覚を打ったみたいだった。――男性は果てたように、上半身を机に横たえていた。たぶん私をネタに自慰に勤しんでいたのだろうと思い、奇特な男性だと呆れた。
 再度、気になる音を追った。この退屈な毎日を変えてくれるかもしれない。私はそう思い、教室を見渡しつづけた。
 ――むしゃむしゃむしゃ。
 やっと聞こえた。微かな音が私に届く。コレが気になる音だ。前方に、思いのほか背中を丸める男性の姿。床には何かの食べカスが転がっている。直視して見続けると、ぽろぽろとパンの破片が落ちてきていた。それが気になった。
 ううむ。あの男とパンの種類が気になり、とりあえず隣の男性に聞くことにした。私で自慰をしたんだ、私が問いかければ何でも答えてくれるだろう。
「おい、オナニー」
「へ?」
「そこの私でオナニーしていた、君だ。聞きたい事があるんだ」
 男性は首を振り、きょろきょろと辺りを見渡した。誤魔化しているようだ。仕方なく、追い込んでみる。
「君がオナニーしていないのならば、微動だにするな。私はこれから机の下に潜り、君の下半身を見る。陰茎が出ていれば大声で変態と叫ぶ。いいな?」
 男性の眼を睨みつけて、低いトーンで問いかける。男性の眼には私が映っていた。そのぐらい近い距離で問い詰める。男性は怯えていた。
「スイマセン……その、していました。質問とは何でしょうか?」
「あそこに居る男性は誰だ。今何を食べている」
 私は気になる男性の背中へ指を差した。すると横の男性はすぐに答えた。
「俺の親友で男といいます。今食べているのは、たぶん……あんパンです」
 ほう、と頷いて男を眺めた。隣の男性は「この事は内密に」と私にお願いをする。そうして、ふと閃いた。ピコッ――頭に光が放った。超弩級宇宙戦艦の波動砲が私の頭の辺りをかすめた。
「これだ」
 いきなりの私の言葉に、隣の男性は「どうしたんですか」と聞いた。その男性に向かって、「ちょっと待ってろ」と告げ、スカートへ手を伸ばした。
「ちょっと……素直さん」
 不思議そうな表情を浮かべる男性。いそいそと私はスカートの中に手を這わせて、ずるずるとショーツをずらしていく。おしりと椅子にショーツが挟まり、捲れあがるように裏になったショーツは床へ落ちた。無造作にそれを掴かむ。
「君……まあ、色気も無い白いショーツだ。コレを持っていけ」
 体温で、ほのあたたかいショーツを男性の上着のポケットに入れる。回りに気付かれないように、後ろから手をまわし、ポケットへ放り込んでやった。
 なにか悪い事でもやっているかのように、こそこそと男性の耳元で話しかける。直立不動になった男性は、少し顔を赤らめて、静かに頷いていた。
「男の情報を逐一知らせてくれ、情報によっては……もっと良い物をやろう」
 すっと無言で、男性はこちらに顔を向ける。困惑した面持ちだった。私は、あんパンを食べる気になる男性の最高の情報が欲しかった。なぜならば、退屈した日常を変えてくれるかも知れないと考えたからだ。
「そうだな……一番良いと思われる情報ならば、私の映像をやろう。好きなだけオナニー出来るだろう」
「ほっ、本当ですか。素直さま」
 気付けば男性は私に“さま”を付けていた。しかし、この男性は私には必要ない。あの見えないが、がつがつあんパンを食べていそうな男性が欲しいのだ。日常を変えてくれる男性が欲しいのだ。
 そこで私は、はっとした。あの男性が欲しいと思ったのだ。これが恋というものなのだろうか……ただの刺激なのだろうか……それは解らない。ただ心の底から欲しいと思った。
「あの、どうしてそこまでアイツの情報がいるンですか」
 私は、この男性と信用取引をするためには、嘘は身を滅ぼすと思い、素直に答える事にした。
「あの男性が、そうそう君の親友が私の日常を変える事が出来ると思ったからだ」
「はあ……」
 男性は理解し難いといった感じで、私と目を合わせパチパチと瞼《まぶた》を瞬かせた。よく男性に言い聞かせるように、思いの全てをぶちまけた。先ほどと同じく「はあ……」と溜め息を吐いていた。
「素直さま。僕はおかずを頂けるので結構ですが、僕たちの関係がすでに日常から離れているように思うのですが……」
「……ま、まあな」
 そうして、あんパンを貪る男性のために、オナニー男性との取引が始まった。非日常を求めて――
 (了)
  1. 2006/09/03(日) 23:37:17|
  2. 短編作品|
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