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こちらは、主に素直でクールな女性の小説を置いております。おもいっきし過疎ってます
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なし崩し的な彼女

「良く来てくれたね、待っていたよ。まさか私に逢いに来てくれるとは思わなかった……幹さん」
「半ば脅迫めいて誘われたのに、良くそんな事をいえるね、松前さん」
「苗字に付け加え、更に“さん”付けで呼ぶなんて、他人行儀だなぁ」
「他人ですから……松前さん。お邪魔します」
「家主の承諾も得ず、ずけずけと上がり込むとは、幹さんは素敵だ」
 毎度毎度の事なので相手にもせず、二階にあがり突き当たりの部屋に入った。
 ――今日の呼び出された理由とは、新開発の肉じゃががあるそうなので、それをご馳走になりに来た。まあ、なりに来たとは語弊があるが、「うちに食べに来ないと、ここで犯すぞ」と冗談にも程遠い脅迫をされたため、やってきていた。
 放課後に入った直後、クラスメイトがわらわらと帰宅準備に勤しんでいる所に、この一言。騒然となるはずだが、残念な事に松前さんの感覚の中では通常と変わらないため、日々の生活に溶け込んでいた。クラスメイトは想定内の事柄で、驚きも何もなく……ただ俺に苦笑を返してくれていた。
 高校に入ってほどした頃、松前さんと仲良くなった当初は断ったり反撃したり――何かしら手を打っていたのだが、結局の所努力は虚しく犯されそうになったために、いう事を聞く事にしていた。
 ――部屋の中に入ると、モノクロを貴重とした小奇麗な部屋。黒い木製のベッドに黒の本棚、白のテーブルに白いドアのクローゼット。テーブルの下に敷かれている、一畳ぐらいの茶色の毛羽立ったカーペットだけがモノクロではなかった。
 俺はいつものようにベッドに寝転がり、手元にある漫画の本を取った。松前さんは箪笥に手を掛ける。
「いつも思うんだけど、どうして俺が来てから着替えるんだ?」
 一度家に帰り、荷物を置いて松前さんのお宅へと向かう。その間にジャージに着替えればいいのに、なぜか制服のままだった。
「誘惑しているんだけどね、幹さん。効果ないかなぁ」
「松前さん松前さん、そういっちゃうと効果ないかな。イキナリ着替え出して、“キャーなんでこんな所に幹さん居るのぉ”、ぐらいやると興奮するかも?」
 松前さんは眉間に皺を寄せて、深く頭を下げた。そうすると、いそいそとブラウスのボタンを外しはじめ、スカートに手をやった所で驚く表情を現して、脱いだブラウスを胸に当てた。
「いやん、幹さん居たの? 恥かしい……見透かさないで」
 瞳を潤ませ、身体全体を使い――いやいやをした。
「ごめんなさい、初めからやる事が分かっていたから興奮しなかった」
「それは残念、次回挑戦しようか……」
 そういって、松前さんは薄い紫のブラとショーツを魅せつけて、ジャージに着替えた。
 多分興奮しないと分かっていた事に対して申し訳ない想いがしたが、俺が松前さんから受ける労責を考えると、自然と心が和らいだ。
「では幹さん、美味しい肉じゃがを作ってくるから、ゆっくりしておいて。一応ブラとショーツは持ち帰り自由だ、帰りに身体検査はしないから安心だ」
「あのね、松前さん……欲しかったら、ちゃんと頂戴っていうから。持って帰らないのは残念だけど、肉じゃが作ってきてね?」
「ケチな人は、通りがかりの変態に白い液体かけられるらしいぞ」
 捨て台詞を吐いて、松前さんは頭を掻きながら階段を下りた。しかし、明らかに体液なのは勘弁願いたい、しょうがない一枚貰っていくか……と、箪笥の引き出しを開け中を物色する。
 中には衣類と下着が入っていた。どうせ黙って持っていく訳ではないので、一旦下着全部を絨毯にひろげた。色彩豊かな下着がずらりと並び吟味する、あまりしっくりとくる下着がないために辟易とした。レースやらシルクやらが入っていて、少し大人っぽくて馴染みがない。コレといって欲しい物がないので、後で松前さんにお薦めを聞くこ事にして、仕方なくベッドで横たわり漫画を読む事にした。
 一冊読み終えようか、となった所で、食欲が湧く肉じゃがの香りを漂わせ松前さんがやってきた。
「出来たぞ、新開発“愛情たっぷり肉じゃが”だ。旨いぞ」
「おかえりー」
 読み終えた本を置いて、テーブルの前に座った。松前さんはテーブルに肉じゃがとご飯、サラダとコップが載るお盆を置いて座る。辺りを見渡した松前さんは、「下着広げてどうした? 良いのはあったのか」と聞いた。
「欲しいのがなかったんだよね、全体的に大人っぽくて、ピンと来ない感じ。イメージ沸かないからねぇ」
「そうか……この白の下着なんかはシルク製で、肌触りが良くてお薦めなんだけど」
 手に取って、松前さんは困惑した。
「この下着が駄目なら、残りは厳しいかなぁ……幹さん、品薄で申し訳ない」
「俺の経験不足かも知れない、松前さん気にしないで食べよう」
 俺たちは肉じゃがに手を付けた。お互い無言のまま、もふもふと食材をほうばった。
 これが、かなり旨い。松前さんの肉じゃがは味醂《ミリン》を使わずに砂糖で仕上げる。ほのかな食用酒の香りと適度な塩気、甘味が全容に渡り濃厚な味わいをみせてる。肉の脂が他の具材に合わさり、じゃが芋は口の中でほろほろと崩れ、味醂にはない食感を楽しませる。
「松前さん、肉じゃが、うめーわ」
「愛情たっぷり染み込ませているからね」
 一通り食べ終え、残りのサラダに箸を付けながら、どの辺りが新開発なのかを聞いてみた。一見して普通の肉じゃがだし格別美味しかったが、特別なにか細工をしていた訳でもなさそうだった。松前さんもサラダをつまみながら、嬉々として“愛情たっぷり”の秘密に付いて答えた。
「隠し味として、蜜が入っている。まあ、幹さんには解るまい」
 ――コンマ1秒も掛からず理解した。蜜と誤魔化してはいたが、正直――わからないでか、といってやりたくなる。間髪入れず俺は答えた。
「愛液だろ? 蜜って、官能小説じゃないか」
 松前さんは腕を組み、うんうんと頷いた。
「鋭い。幹さんは、とても素晴らしい。あまぁい蜜をたっぷり入れたお陰で、ここまで美味しくなったんだ」
 箸を持ったまま、俺は頭を掻く。プラスティックの箸が擦れ、軽い音を立てていた。もう、松前さんの行動には頭が下がりっぱなしだ。
「松前さんね、良く聞いて? 愛液を混入させても甘味は出ないだろう、酸味が出るかも知れないけど」
「こんなにも幹さんとラブラブなのに、あまぁい関係の私から甘味のある愛液は出ないのか? 肉じゃがに酸味とは……」
「合わないね」
「合わない、確かに合わない。幹さんのいう通りだ」
 お互いに顔を突き合わせながら、黙々と残りの料理を平らげた。食べ終わる最中、松前さんの「酸味があろうとなかろうと、旨いから良いじゃないか」の一言に、俺は深く同意した。旨い物は旨い、全国共通だ。


 ☆


 モノクロを貴重とした部屋の中で、鮮やかに華が咲く多彩な下着を眺めていた。二人して体を向かい合わせながら、お互いに唸り困り果てていた。
「これ以上、下着はないんだよねぇ」
「仮にシルクやらデザインのいいレースの下着を持って帰っても、実感が……」
「そうだよね……」
 松前さんと俺は、深く肩を下げた。溜め息を何度も吐いて、松前さんと目を合わせる。
「幹さん、どうしようか? 私の下着は、馴染みがないんだよね。身近なのは、どんなのだろうか」
 天井を見上げ、イメージを沸かせる。頭に浮かび上がるのは、中学の時にあった身体測定の女生徒の下着姿だった。白の無地の下着しか、思い描けなかった。俺は綺麗に並んである下着を見渡して、一番形状が近い下着を手に取った。
「普通の下着かな? こんな感じで白いヤツ」
「ああ……グンゼ。懐かしいな、高校に入ってから着けなくなったなぁ」
 松前さんは思い立ったようにして立ち上がる。「妹が持っているよ」と、俺に伝えた。ドアノブを握った松前さんは勢い良くドアを開け、妹の部屋へと向かう。俺は追いかけるようにして部屋を出た。松前さんがいうのは、妹は中学生で色気のない下着を身に着けている、らしい。真向かいの部屋が妹の部屋だそうで、数歩してドアの前に立った。
「妹はもう中三にもなるのに、いまだコットンの下着をしていてスポーツブラまである。ご期待に沿えると思うよ」
 俺は松前さんの眼を直視して、頭を縦に振った。
 真向かいのドアノブに手を掛ける松前さん、ゆっくりとノブを捻り――ドアを開けた。
「キャッ」
 妹の叫び声が聞こえた。甲高い悲鳴をあげる妹、松前さんは気にせず中にズケズケと入り込む。
 部屋の様子は、目の前の出来事により遮断され、可愛らしいオレンジのカーテンしか目に入らなかった。目前には制服のブラウスを胸元に当て、ブラジャーを着けた上半身を隠す妹の姿だった。瞬時に妹の叫び声が辺り一面に木霊した。
「“なんでお姉ちゃんが居るのよ、彼氏さんもいるじゃんか――見ないでぇ!”」
 ――一同は固まった。
「これだよ、これですよ松前さん。この仕草ですよ」
「そうだね、声量といいタイミングといい……幹さん幹さん、申し分ないな」
 俺と松前さんは、すぐさま妹のテーブルに向かい合って座り、反省会を開いた。「幹さんを彼氏と呼んだ事はポイントが高いな、妹ながら良く出来た子だ」と松前さんは満足気に頷き、俺は「姉貴の彼氏に、不意をつかれみられてしまうネタは大いに興奮する。空気を読む能力は松前さんと違って、抜群だな」と、二人で妹を眺めながら関心した。
 唖然とした妹は、ふるふると打ち震え――「出て行け」手元にある鏡を投げつけた。
 松前さんは「どうして怒っているんだ?」と小首を傾げた。俺もよくよく考えてみると、ポテンシャルが高い、と褒めた所で妹は喜ばないと思い、松前さんをなだめた。
「いま分ったんだけど、男の俺に裸をみられて怒っているんだよ。松前さん、これは仕方がない」
「私は幹さんに食い入るように、穴が開くほど視姦されると、トキメキが止まらないのだけれど」
「うーん、それは松前さんだけね、妹さんはそうでもないと思うよ」
 ふう、と溜め息を吐いて、松前さんはテーブルに肘を突いた。
「分るような分らないような……ああ、それよりもだ」
 何か思い出したようにテーブルに手を突き、腰をあげた。松前さんは妹に近づいて手を差し出す。もう訳わかんない、変態なんて相手してられっかぁ、と言い放ちたくもなる呆然とした面持ちで、松前さんと目を合わす。
「現在つけている下着を貸せ、幹さんにあげるから」
「はぁ?」
 松前さん松前さん、確かに間違ってはいないけれど、明らかに失策ですよ。多分、妹には伝わっていないと思われた。
「それだったら、まるで俺が妹さんの下着が欲しいみたいですよ、松前さん」
 少々松前さんは思案し口を開いた、隣に居る妹は目尻を引き攣らせていた。松前さんは「分りました、幹さん。これからその下着を着けるから、そくさま脱げ」と、妹を一瞥した。
「ちょっと待ってください、松前さん。妹さんが付けていた下着を、また松前さんが付けなおしても、妹さんと松前さんの下着を貰う事になりますよ」
「一理あるな」
 その場で俺と松前さんは立ち尽くした。傍で頭を抱えた妹は、俺たちを睨みつけ静かに切れた。
「馬鹿げた変態行為は、自分の部屋で楽しく、厳かに勤しんで下さい」
 妹に背中を叩かれ、部屋の外へ追いやられた。廊下へ追い出された俺たちは、事の事態をを把握できなかった。しかしこのままだと、妹に変態呼ばわりされた俺は、変態による変態のための変態汁講座が開かれる恐れがある。松前さんと俺は、廊下に蹲り頭を抱えた。
「しまったな、このままでは幹さんは変態ぶっかけ大フィーバーになってしまう」
「松前さんの愛液は“愛情たっぷり”だから気分は悪くないといえ、愛情の欠片も含まれていない変態の体液は、ちょっと……」
「新品のグンゼの下着があれば、問題ないはずだ。これをつければ、雑じっけなしの私の下着だ」
「そうだとしても、これから買いにいくにしてもコンビニには売ってないよ」
 ああだこうだ、と廊下にて会議を繰り返していると、妹の部屋のドアが開いた。中から手だけをひょいっと覗かせて、妹の掌には未開封の下着の上下が握られていた。捨てるように下着を落とした妹はすぐにドアを閉め、ドア越しに罵声を浴びせた。
「それ、あげるから散れバカップル。廊下でごそごそと鬱陶しい」
 丹精込めた手作りの和紙に“勝訴”と書いて、走り出したい衝動に駆られた。これで変態に絡まれる心配はない。豪勢にも新品の下着を松前さんにつけさせて、それを持って帰るのだから――ケチ臭くない。
「よかったな、幹さん」
「助かったよ、松前さん」
 胸を合わせ抱き合い、喜びに打ちひしがれた。気付かなかったが廊下で大分はしゃいだようで、ドアの内側からドン、と衝撃が放たれた。
「早く散れ、変態」
 妹の苛立ちを俺と松前さんは感じ、そそくさと部屋に戻る事にした。


 ☆


 小一時間ほど松前さんの部屋で、他愛もない会話を繰り返し、松前さんにつけさせた下着の馴染み終わるのを待っていた。新車の慣らし走行と一緒で、人肌に温まりしっくりと下着が身体に馴染むのを待っていた。
 妹に怒られ部屋に戻った当初、松前さんはジャージを脱いで下着を穿きかえる際、Tシャツを胸に当てて「いやん、どうしてこんな所に居るのぉ……」と、以前の失敗をものともせずやり遂げた。そうして、生暖かいグンゼ製――白いブラジャーとショーツを受け取り、松前宅を後にした。
「また遊びに来いよぉ」
 玄関で手を振る松前さんは、何か満足気だった。
「どうせ強制的に遊びに来る事になるよ」
 そう悪態を吐いて、俺は家路に着いた。変態との遭遇に怯え、興奮冷めやまぬ身体をクールダウンさせつつ住宅街を歩く。少し落ち着いてきていた俺は、よくよく考えてみると松前さんの世界に引き込まれていた、と気がついた。
 俺は唸りながら頭を掻いた、とりあえず変態と遭遇しないと思われるため、明日下着を返すことにしよう、とそう考えていた。
        了

  1. 2006/09/14(木) 18:59:42|
  2. 短編作品|
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