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こちらは、主に素直でクールな女性の小説を置いております。おもいっきし過疎ってます
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究極のカレー味~ショートショート~

 昼間の日焼けを気にして憂鬱になりながらも、内村咲子《うちむらさきこ》は座敷に座った。テーブルを挟んで、越智正人《おちまさと》がおしぼりを解き、手をもむ。首元におしぼりを当てた正人を眺め、咲子は頭の痛い思いをした。
 焦って結婚仲介所に駆け込むんじゃなかった、と咲子は眉間に寄せた縦皺を親指で押し込んだ。
「今日は楽しかったね」
「そうね、正人さんって結構物知りなのね」
 正人の笑顔につられ、咲子は笑顔を攣《ひきつ》らせた。咲子は正人に合わせるのも阿呆らしくなっていた。
 どうして初めてのデートが植物園なのよ、ぴくりとも動かない物を観て何が楽しいの? トドメに「行きつけの店があるから」と、のこのこ付いてきた店が居酒屋だった。
 店内は小奇麗にしているが、大衆食堂のような造りだった。高い天井から並列に蛍光灯が点いている。蛍光色の光からは暖かみが感じられず、高い天井からの光は客席まであまり届いていなかった、全体的に薄暗い。
 咲子は正人にわからないように警戒して、ジンジンと腫れあがる腕におしぼりをあてる。戻りの悪い肌を労わっていた。
 かなり失敗した、そう咲子は感じていた。
 年収だけを追って手当たり次第に手を出したのが失敗だったか。咲子が勤める中堅企業の同期は着実に円満退職し、最終的に咲子だけが残ってしまった。同期の親友の優子《ゆうこ》は先陣を切って退職し、男がなんだ、と咲子は仕事に没頭した。が、結果に反映せず、ずるずると上がることも無く平の地位に従事する。
 二十も後半に入り最後の同期にしてやられた咲子は、先の無い会社に見切りをつけ、結婚仲介所に駆け込んだ。
 真っ黒になったおしぼりを置いた正人は、つきだしを箸で突《つつ》きだした。
 ネル地のだぼついたシャツにジーンズ、咲子より五つほど歳が上の正人は休日のスタイルとしてはそこそこだが、体形があまり宜しくなかった。ドラム缶のような太った体形、頭から脚まで変化のない体格。
 スポーツでもしろよー、お腹の肉キロ五十円で売れるんじゃないの、と腹の中で悪態を吐いた。
 そうこうしている内に、店員がテーブルの横に屈み、注文を取る。
「内村さん、とりあえず生中でいいですよね」
「ええ、それで」
 一瞬、場の空気を読まずにロゼでも頼んでやろうか、と咲子は考えたが止めた。会社で売れ残るぐらいだから大して目立つところもない、保険でも何でも可能性を残しておくべきだろう、と正人に従《したが》った。
 ほどして店員が生ビールを運んでくる。正人はホッケやら揚げ出し豆腐やら三、四品を注文した。
「内村さん、こんな話知っていますか?」
 また始まった、咲子は無意識に眉を顰《しか》めた。
 昼間の植物園のデートは、主に正人の独演会だった。逐一《ちくいち》、植物のうんちくを聞かされた。植物に興味が無い咲子は、ただそのうんちくが鬱陶しいだけだったが、動物園などで鑑賞を邪魔されていたら二重の苦だった。とはいってもその場で殴り倒していれば、こんな居酒屋まで付き合うことは無かった。咲子はドギマギとした。
 正人はポケットから煙草を取り出して火を点ける。テーブルの上にechoとライターが置かれた。正人は煙をあげながら、独演会の始まりだった。
「あのですね、究極の選択ってあるじゃないですか――」
「そうですね、昔流行りましたね」
「それが結構面白いんですよ。なんていうんですか、本質を突いているといいますか」
「はぁ――」
 咲子は、昼間下らないうんちくを散々聞かされたことで聞き流す術《すべ》を覚えた。正人の話は咲子の耳に入っていない。咲子はテーブルに置かれている煙草とライターが目に入った。一箱百八十円の煙草と百円ライターだ。
 正人は大手家電メーカーの課長をやっていて、株式に手を出している。昼間、聞かされた話によると、短期売買は避け長期投資と配当がメインだといっていた、着実に種銭が増えていると。さらに三十前半で課長とすると、将来的な見通しがつく。しかし咲子は煙草とライターが気になった。この人、節約家というよりもただのケチ臭いだけかも? と。
「――それでですね、内村さん」
「はい?」
「この選択なんてどうでしょう」
 咲子をよそに、一方的な独演会が続いていた。正人は煙草を灰皿に押し付け、火種を揉み消す。テーブルには皿が並んでいた。ホッケに箸を伸ばす正人は、究極の選択をいう。
「カレー味のウンコとウンコ味のカレー、どっちか選べといわれたらどちらを選びますか?」
「そうですね……」
 この飯時《めしどき》にアンタは、TPO考えろよ。咲子はいい加減嫌気が差し、立ち上がった。にっこりと優しく笑顔を浮かべ、咲子はテーブルに三千円を置いた。
「越智さん――金持ちで出し渋りしそうなデブと、素寒貧のいい男、どちらを選びますか?」
「内村さん?」
 ぴたりと貼り付いたように、店内は悄然となった。正人の表情が固まる。
「いいたくないですけれど……先ほどのカレーの件ですが、私なら食べずに餓死にますね。失礼します」
 咲子は足をハイヒールに押し込んで店から飛び出した、七時を少し過ぎた時刻だった。表に出ると、閑散とした四車線の道路が目の前にひろがっていた。あまり障害は無く、咲子は夜風を直接受ける。無駄に過ごした休日を思い返し、虚しさが込み上げてきた。
 正人の軽自動車で送って貰うはずだった咲子は電車で帰ることになり、駅までの道のりを歩く。
「カレー話も実際、嫌なとこ突いてるんだよね」
 咲子は思わずせせら笑った。
 金持ちのウンコ野郎を取るか素寒貧のカレーを取るか、カレー味のデブを取るかウンコ味のいい男を取るか? そうなんだよねー悩むところだわ。粗方結婚に希望を抱いている咲子は、即決とはいかなかった。
 咲子がうだうだと考えいると、バッグの中から携帯の着信音が洩れた。手に取ってみると、優子と表示されている。同期の中で、トップ当選した優子からの電話だった。
「なによ優子、嫌がらせ?」
「この時間なのに電話に出るとすると、オッチー失敗した?」
「五月蠅いわねー、こっちからお断りしたのよ。あんなヤツと酒呑めるかって」
「へーそうなんだー」
 親友の優子は、学生時代からそういうヤツだった。一緒に完走しようね、とかいってスタート直後ダッシュかますヤツだし、仕事頑張ろうね、とかいって真っ先に円満退職するヤツだ。今回は上手くいったか失敗したのか確認するために電話をしてきた。上手くいっていたら電話を取らないと踏んで電話をしてくる、失敗してたら電話に出るから。
 咲子は一通り優子に経緯を伝えた。そうすると、電話越しに優子の笑い声が聞こえてきた。
「そりゃあ咲子、災難だったわねー。でも、ウンコでもカレーでも何でも食べとかないと、三十越えだすと餓死するよね。咲子も半分ウンコに足突っ込んでるんだから」
「誰がウンコだ、まだカレー。優子はもうウンコでしょ」
「馬鹿ねーウンコでも食べてくれる旦那が居んのよ。で、どうすんの? オッチー」
「そうね……」
 咲子はこの話をどうするか考えた。続けるにしてもやめるにしても、この先を考えるとウンコかカレーか選択しておかないといけない。咲子は優子に、こう答えた。
 ――まあ、なんにしてもこの話、越智《おち》は無いわ。
      了
  1. 2007/01/31(水) 03:30:24|
  2. 短編作品|
  3. トラックバック:1|
  4. コメント:1

コメント

ご指摘ありがとうございます。

 親切に、ありがとうございます。この内容では、ルーですか? そちらでもカレーライスでも変わらないので、自己内部変更お願いします。
 この題名ぐぐると、4件ぐらいしか出てこなかったので、気になったんでしょう。そうはいっても、内容がウンコやカレーやらでどうなんでしょうか……
 ……みたいなことになっちゃってますけどね(笑)。
 ありがとうございました。
  1. 2007/02/26(月) 19:42:40 |
  2. URL |
  3. pool #-
  4. [ 編集]

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「カレー」について

カレーカレー (Curry) は、日本では一般に「カレーライス」の略称として用いられる、スパイスなどで野菜や肉を煮込んだ料理。本来はカレー粉・カレーソースのみのことであるが、日本では白米のご飯にかけて、あるいは一緒に出される為、カレー=カレーライスと認識される。
  1. 2007/02/25(日) 14:10:05 |
  2. 世界の料理!
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